「工場長は改善やら生産性向上やら言ってますけど、
まずはウチのラインのリーダーに仕事させて下さいよ!」
Excel工場長の滝岡です。
これは滝岡が工場長に就任して間も無くのこと、あるラインの作業者が改善会議で発言した内容です。
当時は、工場管理の知識は数冊本を読んだ程度しかなく、まずは教科書通りに改善改善と繰り返し言ってた時代でした。
脅しゴリ押しでは進まなかった工場改善
「改善やれ!やれ!何でやらない?
やらないと生き残れないんだからやるしかないだろ!」
と、半分脅し(にもなってないけど)のゴリ押しで進めようとしていました。
ただ、作業者からすると、
「改善改善言ってるけど、俺らが苦労して作ってきた作業方法を頭ごなしに否定して、ろくに作業した事ないクセによく分からないやり方を押し付けるな!
まずは目の前の問題を片付けないと、まともに生産できないだろ!」
というのが言い分でした。
なんで分かるのかというと、
実は後から教えてもらいました^^
お互い違う方向を向いており、しようとしている行動が一致していません。
これではお互い不幸です汗
もちろんこんな状況で成果など出るはずもなく、
月日がいたずらに経つばかりでした。
「そんな考えでは工場管理はできん!」
ある日、滝岡の恩師とも言える、違う会社の工場長と食事をご一緒する機会があり、ついこの話をボヤいたら、思いがけず厳しい叱責ををうけました。
「滝岡、お前それは現場を全く見ておらん。
自分の目で現場をよーく見て、それで問題だと思うことを解決していくんだ。
現場の見方にも方法がある。便利だから今から教えてやる。」
こんな簡単に問題が分かるんだ!
恩師に教えてもらった方法とは、
ワークサンプリング法
という手法でした。どんな方法か説明しますね。
ワークサンプリング法とは、ある任意の時点で、各作業者が行っている作業を瞬間的に観測して集計し、分類する方法です。
手順としては
①観測対象を決定します。
観測者がさほど移動せずに作業者全員を確認できるのであれば、全員を対象にしても問題ありませんが、建屋が違ったりすると移動するだけでも時間がかかるので観測する作業者を絞ります。
②観測区分を決定します。
観測対象となる作業者が、どんな作業をしているのか分けるための項目です。大まかな分類で構いません。正味作業なのか、運搬やワークのセットなど付属作業なのか、歩行や相談などの非正味作業なのか、といった具合です。
③観測時刻を決めます。
ランダムに観測するのか、周期的に観測するのか決めます。滝岡は1時間ごとに観測する方法を取っていました。
④観測用紙に観測結果を記入します。
⑤集計します。
一度実行してみると分かるのですが、手順が簡単なのでざっくりした把握になるかと思いきや、かなり実態に近い観測ができます。
また、月一回決まった日に計測することによって、工場の改善効果の推移が見えたりするので、作業員へのフィードバックにも活用できます。
忙しくてまとまった時間が取れない場合でも実施できるので、超おススメの方法です!
ワークサンプリングによって明らかになったラインリーダーの問題とは
早速次の日からワークサンプリング法を用いてラインリーダーの作業時間を計測すると、その結果に唖然としました。実質手を動かしてる時間が半日以下というひどい有様だったのです。
もちろん、さぼっているわけではありません。
他の作業者がリーダーの元に生産工程の順序などを確認しにやってきて、またそのリーダーが親切に一人一人に丁寧に説明していたからでした。
と、言うのも、その生産ラインに流れる製品は数百種類あり、それぞれ作り方が違っていて、生産指示書を作成する管理側も、現場でどう混流させるか決めきれないという問題もあり、指示書は生産してほしい製品をリストアップしただけ、という状態でリーダーに渡していました。
リーダーの頭の中では、数百種類の製品の工程順、作業負荷、各作業員のスキルを計算し、生産順を計算して指示していたようなのですが、他の作業員はリーダーの説明が頭に入らず都度確認しに来るという状況でした。
もちろん、作業員がリーダーの元に来るたびに手が止まります。
これは大問題です。
一番の問題は見えないこと!
ではこの問題、何が悪いのか分かりますか?
説明に時間を割くことがダメと思わないラインのリーダー?
生産指示を把握していない作業員達?
現場に丸投げしたような指示書を作った管理担当者?
滝岡が出した結論はこうでした。
「この生産工程は、システム化されていないことが原因で様々な問題を発生させている」
です。
リーダーの考え方を見える化する!
改善の基本は、とりあえず見える化です。
問題がはっきりしない時は、まずは見えるようにすることで問題の8割が解決したりもします。
☑作業ならどういう順番でやるのか書き出してみる。
☑書類なら作成・提出するフローを書き出してみる。
☑考えがまとまらないなら、まずは思いのままに書き出してみる。
この問題の解決になるヒントはリーダーの頭の中にあるので、まず最初にリーダーがどのように考えて生産工程を組んでいるのかヒアリングをして明らかにしていきました。
ラインを流れる数百種類の製品も、制作工程の視点からすると、大まかに数十種類に区分できます。
これを縦軸とします。
次に横軸に製造工程を並べると、将棋盤のようなマス目が出来上がります。
作業することでそのマス目を埋めていくイメージです。
とても分かりやすかったので、この考え方をフォーマットにして指示書を発行するように改善することになりました。
名前を「生産管理板」としました。
(命名センスが無くてスミマセン^^;)
誰もが驚く効果をたたきだした生産管理版という改善
まず、生産管理板を生産指示の発行と同じタイミングで出力できるようにします。
リーダーには生産管理板を使って段取りの説明を作業員にしてもらいます。
一日三回、朝礼・昼礼(昼休みの直後)・夕礼(現場終了時)で設定し、生産の現状と修正計画、作業者からの質問や疑問もその時に共有します。
すると生産指示は現場への一方的な指示ではなく、現場と管理担当者のコミュニケーションツールになっていきます。
見慣れてくると、作業者はリーダーに聞かなくても次にやるべきことがはっきりしています。
管理担当者はリーダーに聞かなくても生産の進捗が分かります。
生産管理板を導入してから二週間目には、現場では確認のための会話が無くなり、一日中全員が作業に集中している光景が広がったのです。
元々、仕事が早かったリーダーが作業に集中でき、ほかの作業者も確認することがなくなったので、このラインの生産性が向上したことは言うまでもありません。
約2割も改善したのです。
自分で言うのもなんですが、驚きますよね。
これがExcelで作る生産管理板だ!
製品を縦軸に、横軸には工程を配置します。
その作業が終了したら、クロスするマスにマグネットを置きます。
工程が進むにつれてマス目が埋まっていくという状況が、ゲーム感覚を刺激して早くゴールにたどり着きたいという気持ちを促すようで、作業が早くなっていきました。
実際、マグネットを動かす瞬間、楽しそうにしていました^^
段取りの打ち合わせでも前向きな発言が多くなります。
まとめ
いかがでしょうか。
結局、冒頭で滝岡に向かって意見した作業者も含め、
どう段取りしているかが見えなかったことが何よりも不安に感じストレスになっていたようで、
作業内容の結果と予定がはっきりと見えることによって安心したようでした。
工程の負荷が見えるので平等に仕事を振ることができ、また、リーダーがどう考えていたかが明らかになったので、他の作業者にとっては考え方の教育にもなります。
駆け出しだった滝岡も、この一件を通じて、工場現場をよく観察することで何が問題で、生産性を阻害しているかということを学びました。
あなたの工場も、価値を生む仕事に最大限の時間を使えていますか?一度、確認してみてはどうでしょうか?
滝岡の工場では、このワークサンプリング法が一つのラインの改善にとどまらず、工場を救うにまで活用することになったのです。
話が長くなったので、その話は次回にでもご紹介します。
わたしのところではこうでした、とか、もっと詳しく教えてほしい!など
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